ボンジョルノ!皆さん、こんにちは!
今回も「仕組債」のお話となります。「仕組債」は、債券とデリバティブ取引を組合せて作られたものであり、通常の債券よりも高い利回りが期待できたりします。しかし、知らず知らずのうちに高リスクなポジションをとっており、相場の急変で大損してしまうことも…。仕組債といってもデリバティブ取引のポジションの取り方でハイリスクにもローリスクにもなりえます。今回は様々な仕組債の種類を解説していきたいと思います。
そもそも「仕組債」とは?という方は以下の記事をチェック!
仕組債の種類
今回の記事で説明させて頂く仕組債は上記6種類ですが、仕組債がデリバティブを内包した金融商品である以上、実に様々なタイプの仕組債を生成することが可能となります。ですので様々な名称や様々な種類がある点を予めご認識いただければと思います。今回説明した以外のタイプの仕組債もありますし、今後新しい名称の仕組債が登場することも可能性としては十分ございます。ではこの6種類についてみていきましょう。
EB債(他社株転換可能債券)
Exchangeable Bondの頭文字をとってEB債と呼ばれる仕組債です。とはいえEB債は選択した株式銘柄の値動きでリターンが決まるため、債券というよりは株式に投資しているというイメージを持ったほうがわかりやすいと思います。EB債は内側では株式のオプション取引が含まれており、コールオプションの売りとプットオプションの売りから得られるプレミアムを原資に高利回りを実現しているとイメージしておくとよいでしょう。
EB債でよく出てくる専門用語を解説いたします。
ノックイン:株価などが一定の水準を下回ることを言います。ノックイン条項などで定義されますので、このノックインが発生したらどういう事態になるのかを把握しておく必要があります。よくあるのが、ノックイン判定がされたら株券で償還されるというパターンです。
ノックアウト:株価などが一定の水準を上回ることを言います。ノックアウト条項などで定義されますので、ノックインと同様にノックアウトとなったらどういう事態になるのか把握しておく必要があります。よくあるのがノックアウトとなると早期償還となり、元本で戻ってくるというのがあります。
デジタル・クーポン:株価などが基準水準を上回ったか、下回ったかなどの状況をもとに利金が決定されます。判定日における株価水準によって利金の金額が変わりますので、条件をよく確認しておくことが必要です。
実際どういう動きになるかを上の図で説明します。(EB債は個別に様々な条件で組成が可能なのであくまで一例となります。)
・青色の値動きパターン
一回目の早期償還判定日前に一度早期償還判定水準を上回っていますが、早期償還判定日には水準を割っています。ですのでここで早期償還とはなりません。三回目の早期償還判定日には水準を上回るため、このタイミングで額面100%での早期償還となり、このタイミングまでの利金を得ることができます。
・茶色の値動きパターン
最終償還判定日まで一度も早期償還判定水準を上回ったり、ノックイン判定水準を割っていません。この場合は、最終償還判定日に額面100%で償還となり、最後まで利金を得ることができます。
・緑色の値動きパターン
保有中にノックイン判定水準を割った場合は、最終償還判定日のタイミングで株式での償還となります。ちなみに最終償還判定日の時点で行使価格を上回っている場合は株式ではなく、額面100%での満期償還となります。
債券というとローリスク・ローリターンなイメージがありますが、EB債の中身は株式のオプション取引となる仕組債ですので、債券というイメージで投資するとミスマッチが生じてしまいます。一方で株価がそれほど動かない局面でEB債を組めば、オプションの売りから得られるオプションプレミアムを原資とした高利回りを享受することができます。EB債への投資を検討する場合は、必ずどういうパターンになったらどうなるのかを理解した上で判断しましょう。
EB債と仕組み債の違いはなに?
EB債は様々な種類が存在する仕組み債のうちの一つの種類です。株価に連動しており、条件によっては株式で償還される可能性があるため、Exchangeable Bondの頭文字からEB債と呼ばれています。類似の仕組み債ではデジタルクーポン債やデジタルクーポン型の仕組み債というものも存在します。デジタルクーポン債も中身はEB債と同様で株価や指数などに連動して、値動き次第でクーポンが変わったり早期償還(ノックアウト)やノックインと判定されたりします。
デュアルカレンシー債
Dual Currency債。つまりDual (2つの) Curreny (通貨) ということで2種類の通貨が設定されている債券です。通常の外債を購入する場合は、例えば米国債を例にあげると購入時はドルで購入して、利金もドルで受け取り、満期償還時にはドルで額面100%で返ってきます。このうち、利金を円で固定するものをデュアルカレンシー債と呼びます。利金が円建てで固定されるので為替レートに左右されない一方で、満期償還時には外貨で返ってくるので、購入時より円高になっている場合は円ベースで元本毀損となります。償還判定為替レートなどが通常設定されており、一定水準までの円高であれば額面100%での償還となる場合が多いです。こちらも検討の際には、どういうパターンが想定されるかをよく理解した上で投資しましょう。
リバースデュアルカレンシー債
デュアルカレンシー債の利金と償還時の通貨が逆になったのが、リバースデュアルカレンシー債となります。こちらは償還時の通貨が円となるため、満期償還時に元本割れする恐れがないのが強みです。とはいえ利金は円換算した場合は為替水準に左右されるので急激に円高となれば、利金は当初想定より少ない利回りになってしまいます。
パワーリバースデュアルカレンシー債 (PRDC債)
リバースデュアルカレンシーの為替反応度を更に高めたものがパワーリバースデュアルカレンシー債(PRDC債)となります。為替レートとクーポンレート(利回り)の相関性がより高まりますが、その分ある一定の水準より円高になるとクーポンレートが出なくなるという特徴があります。
PRDC債もまた円高になってもゼロではなく最低限のクーポンレートで止まるように設定したり、ある一定以上円安になるとクーポンレートは青天井ではなく上限クーポンレートを設定して、一定以上の利回りが出ない代わりに最低限のクーポンレートも設定するなど、色々な条件があるのでこちらも投資判断前に十分条件を理解しておく必要があります。
*RDC債(リバースデュアルカレンシー債のことを指しています。)
クレジットリンク債
こちらはクレジットデフォルトスワップ(Credit Default Swap)というデリバティブが内包された仕組債となります。CDSは何をスワップしているのかというと信用リスク発生時の損失負担を買い手と売り手でスワップすることになります。投資先の会社が潰れた時の保険というイメージで持つとわかりやすいと思います。かみ砕いて説明すると、この保険の買い手は、保険料を払ってもし対象の企業が倒産した場合に、保険の売り手から補償額をもらうことができます。一方で何も起きなかった場合は保険の売り手は、保険料がまるまる利益となります。
このクレジットリンク債は、この保険料が原資となり、通常の債券より高利回りを実現できます。一方で投資家は、対象企業の倒産などのクレジットリスクを負うことになります。
指数連動債
株価指数連動債などと言われるものもあります。ようするに日経平均株価やS&P500といった株価指数に連動する債券となります。EB債と違って特定の銘柄を参照していないので株券償還とはなりませんが、EB債同様指数の値動きにより償還額や利率が変わってきます。上手く設定すれば元本割れはしないようにもできますので、指数が上昇すれば無限大の利益を、指数の値動きがあまりよくなくても最低限のクーポンに加えて元本で償還されるなどローリスクに組成することも可能です。
仕組債は中身にデリバティブを内包している性質上、ある意味無限パターン組成できると思います。それぞれ独自のリスクとリターンがありますが、デリバティブへの理解を深めてから手を出したほうがいい商品もあり、初心者向けとは正直いえません。また組成に必要な最低限の投資額も億単位となっている場合が多く、個人投資家の方々にはハードルの高い商品となります。
仕組債のリスクとメリットを理解しよう!
仕組債には、他の金融商品にはない独自のリスクとメリットがあります。
まず仕組債のメリットですが、通常の債券よりも高い利回りが期待できる点が大きな魅力です。これは仕組債がデリバティブという金融商品を組み合わせているため、より複雑でリスクが高い投資が可能になっているからです。
また仕組債は基本的に投資家ごとに一つ一つ組成します。投資家の方のニーズにマッチした年限(満期までの期間)や条件・条項を設定することが可能なのが特徴です。資金需要に合わせて、色々と相談できるのも強みです。仕組債は証券会社によっても取り扱いルールや条件が違うので、複数の証券会社に所属しているIFAに相談するのがオススメです。
では、仕組債のデメリットですが、これはデリバティブが内包されているため、リスクが見えづらいことです。抑えておくべきリスクは、発行体リスク(仕組債を発行する金融機関)、内包するデリバティブのリスクです。発行体リスクは普通の債券でも同様にあるので抑えやすいですが、やはり内包するデリバティブに起因するリスクはよく抑えておいたほうが良いです。
2022年はロシアによるウクライナ進行があったりと相場が荒れ、ハイテク株などを使って組成したEB債は大きく元本毀損となる事態が発生しました。EB債は株式だな、と思って投資していた投資家はある程度納得できているかもしれませんが、債券だと思って購入していた投資家は動揺してしまったと思います。仕組債は怖い、と一括りにしてしまうのは勿体ない部分もあります。例えば前述したPRDC債などであれば、国内の債券より高利回りを期待できつつ、かつ満期償還時は円で元本償還されるという安心感もありますので、一概に仕組債を悪者にするのは間違っているかなと思います。
このように、仕組債には魅力的な面もリスクもありますが、それらを理解して適切に取り組むことが重要です。仕組債投資を行う際には、専門家の意見を聞いたり、十分な情報収集を行い、自分のリスク許容度に合った投資をすることが大切です。
まとめ
仕組債は債券とデリバティブを組み合わせた複雑な金融商品で、ある程度経験のある投資家の方々にとっても理解が難しいかもしれません。しかし、ある程度のリスクをとりながら高利回りを実現したいという投資家の方にとっては非常に魅力的に映ることでしょう。まだまだ解説できないくらい無数に仕組債は存在します。その都度都度で投資判断をしっかり行い、自分がどういうリスクをとっているのか、どういうポジションになっているのかを理解しておく必要があります。
とはいえPRDC債のように円ベースでの元本確保しながら高利回りを期待できる商品もあるので、IFAなどの意見を参考にし、感情に流されず冷静な判断を行いましょう。仕組債投資の成功のためには、リスクとリターンをしっかり理解し、自分に適した投資方法を見つけることが大切です。本記事が仕組債投資の手助けとなることを願っています。今後の投資ライフを楽しみながら、賢くリスクを取り入れて豊かな未来を築いていきましょう!
それでは皆さん、アリーヴェデルチ!またね!
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