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2023.5.27

事業承継税制における先代経営者と後継者に対する要件を徹底解説!

事業承継税制における先代経営者と後継者に対する要件を徹底解説!
目次
01. 
事業承継税制とは
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02. 
事業承継税制における贈与者と受贈者の関係
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03. 
入口要件
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04. 
事後要件
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05. 
まとめ
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ボンジョルノ!皆さんこんにちは!

今回は事業承継における税制について解説していきたいと思います。事業承継は「事業」つまりビジネスに関わることである故に金銭的な側面は重要です。特に経営をされている皆様であれば釈迦に説法ですが、税制や納税は経営で常に意識しなければならないポイントです。事業承継における税金まわりのお話も理解しておくことで、事業承継における失敗や後悔を回避することができるでしょう!贈与者である先代経営者、受贈者である後継者、そして会社に対しても細かい要件が設定されております。2027年12月31日までの特例措置に基づいた要件やメリット・デメリットを解説していきたいと思います。

事業承継税制とは

事業承継税制は非上場会社の株式を贈与または相続によって後継者が取得した場合に、一定の要件のもとであればその納税が猶予され、先代経営者もしくは後継者の死亡等によって、贈与税および相続税の納付が免除されるという制度になります。平成30年の税制改正によって、それまでの措置から要件が緩和されたりしています。(2027年12月31日までの特例措置)

事業承継税制の適用要件としては大きく2つあり、適用を受けるための「入口要件」と、適用を受けた後その税が免除されるまで(死亡等まで)の期間遵守しなければならない「事後要件」で構成されます。

入口要件に関しては、贈与者(先代経営者)と受贈者(後継者)と会社の3者に対して要件があり、事後要件に関しては、受贈者(後継者)と会社の2者に対して要件が設定されております。

事業承継税制における贈与者と受贈者の関係

さて、各要件についての詳細を説明する前に、贈与者と受贈者についてもう少し触れておきたいと思います。
贈与者が先代経営者だけの場合もあれば、複数の贈与者が存在する場合もあると思います。(例えば先代経営者の配偶者など)この場合の配偶者の株式の贈与も本承継税制の対象となります。ただ、注意しておきたいのがこの場合には先に先代経営者からの贈与を行い、その後期限までに贈与をしないと適用ができないという点です。
また受贈者についても特例措置では最大3名まで認められているため、会社の状況によっては集団指導体制の設計といったことも可能となっています。

入口要件

現行の特例措置の適用を受けるためには、贈与者(先代経営者)と、受贈者(後継者)、そして会社に対してそれぞれの要件があり、これらをすべて満たす必要があります。主な要件は以下のとおりです。

贈与者(先代経営者)に対する要件

 ・会社の代表権を有していたこと
 ・贈与時において会社の代表権を有していないこと(贈与前に退任が必要)
 ・同族関係者の中で筆頭株主(議決権ベース)であること
 ・他の同族関係者と併せて議決権過半数を有すること
 ※贈与者が複数の場合には、先代経営者以外の贈与者による贈与は、先代経営者の贈与以後に行うこと

受贈者(後継者)に対する要件

 ・会社の代表権を有していること
 ・18歳以上であること
 ・役員の就任から3年以上経過していること
 ・他の同族関係者と併せて議決権過半数を有すること
 ・同族関係者の中で筆頭株主(議決権ベース)であること
 ※後継者が複数の場合には、総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別な関係がある者の中で上位2,3位の議決権数を保有することになること

会社に対する要件

 ・会社が中小企業者でかつ、上場会社・風俗営業に該当しないこと
 ・資産管理会社でないこと(一定の要件を満たすものを除く)

ちなみに「中小企業者」であるとはどういうことなのかについても説明しておきます。
中小企業基本法では中小企業者を以下のように定義しています。

↑資本金の額と従業員数の2つの基準が示されていますが、これはどちらかを満たせばよいという考え方になります。

以上の要件をすべて満たすことで事業承継税制の適用が受けられます。とはいえ、いきなり税金が免除されるわけではなく、まずは納税が猶予されることになります。税金が免除されるのは、先代経営者や後継者の死亡などの理由により、その時点で税金が免除されます。

納税の猶予期間中は「事後要件」を守る必要があり、事後要件は申告期限から5年間と5年経過後の2つに分けられます。主な要件は以下のとおりです。

事後要件

申告期限から5年間

 ・後継者は代表者でありつづけ、かつ株式を保有し続けること
 ・会社の雇用を平均80%以上維持すること
 ・資産管理会社に該当せず、上場会社・風俗営業会社に該当しないこと
 ・売上はゼロ円超、資本金・準備金を減少せず、解散せず、種類株式を後継者以外が保有していないこと

5年経過後

 ・株式を保有し続けること(全部または一部)
 ※経営環境変化(過去3期のうち2期以上赤字など)に該当する場合、売却・合併・解散も可
 ・代表者の退任は可、雇用維持要件の解除、上場会社・風俗営業要件解除
 ・資産管理会社ではなく、売上はゼロ円超、資本金・準備金を減少せず、解散していないこと(経営環境変化による解散は可)

当然ではありますが、最初の5年間のほうが厳しい要件となっていて、要件を満たさなくなった場合には猶予されていた税金を全額納付しなければなりません。5年を経過すると株式の売却も可能になりますが、その場合、売却分に応じた猶予税の納付が必要になります。

まとめ

事業承継税制をうまく活用することで、事業承継を円滑に行う助けとなりますが、要件を満たせるかどうかが重要なポイントになってきます。特に事後要件に関しては長期間に渡るので、事前の準備計画が欠かせません。専門家のアドバイスをもらいながら検討していきましょう。

それでは皆さん、アリーヴェデルチ!またね!

忠嶋哲寛
執筆者
忠嶋哲寛
DCプランナー・ファイナンシャルプランナー
株式会社ポンデア代表取締役。 東京工業大学にて経営工学を専攻し、大学卒業後は日系メーカーに就職。10年間のSE経験の後、株式会社IS.PROJECTSにてM&Aアドバイザー、証券外務員として従事。現在は株式会社ポンデアにて企業への企業型確定拠出年金制度や金融教育の導入を行う。 会社・経営者・従業員、みんなが幸せになるための情報を発信していきたいと思います!趣味は愛犬(豆柴:ぼの)とお酒とゴルフです。 保有資格 DCプランナー2級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種
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