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2023.5.26

ヘッジファンドの運用戦略 どういった戦略で利益をあげているの?

ヘッジファンドの運用戦略 どういった戦略で利益をあげているの?
目次
01. 
ヘッジファンドの運用戦略
矢印
02. 
株式ロングショート戦略
矢印
03. 
グローバルマクロ戦略
矢印
04. 
イベントドリブン戦略
矢印
05. 
レラティブバリュー戦略
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06. 
まとめ
矢印

ボンジョルノ!皆さん、こんにちは!

投資経験がある方でしたら「ヘッジファンド」という言葉は耳にしたことがあるのではないでしょうか?とはいえ日本の一般個人投資家の我々がヘッジファンドに直接投資する機会というのはまだまだ珍しく、実際にヘッジファンドで資産運用をしている方は少数派だと思います。

ヘッジファンドというとどういうイメージがありますか?空売りにより相場の急落で利益をあげるイメージでしょうか?それとも物言う株主として経営陣に要求を突きつけ企業価値の最大化を狙うようなイメージでしょうか?実際にヘッジファンドはどういう風に利益を上げているのか、という点を今回は解説していきたいと思います。なおヘッジファンドとは?についてはこちらの記事も見てみてくださいね!

「ヘッジファンドとは?手数料体系やリスク・リターンについて」記事へのリンク

ヘッジファンドの運用戦略

絶対収益型という言葉で表されるようにヘッジファンドは基本的に相場の上げ下げに関係なく、どんな市場状況でも利益を追求するような戦略が求められます。リーマンショックやコロナショックなどで相場が急落したので、同様にファンドの実績も大打撃を受けるようではヘッジファンド失格となってしまいます。投資家としても、ヘッジファンドへ投資する理由として、リーマンショックやコロナショックなどの相場急落リスクをヘッジしたいという思惑もあります。ですので、ヘッジファンドは様々な運用戦略をとることでどんな状況でも収益を上げることが求められるわけです。

株式ロングショート戦略

ロングとショートという言葉は馴染みがあるでしょうか?日常生活ではサイズや長さを表す言葉として使われますが、投資においてはロング(買い)とショート(売り)という意味で使われます。株式をはじめ多くの金融商品は信用取引により実際に現物を保有していなくてもショート(売り)からエントリーできます。ロングショート戦略を使って、ヘッジファンドは割安株や価格の上昇が期待できる局面でロングし、逆に割高株や価格の下落が見込まれる局面などでショートし、収益を獲得します。ショート戦略を使うことで、相場の急落場面でも収益を上げることが可能です。

メリットとしては、株式を使っていくため流動性が高く、機動性高くかつ透明度の高い取引であるところです。どんな局面でも売り買いは基本成立するので収益機会が存在するところが強みです。デメリットとしては、一本調子で相場が上昇するような場合はロングショート戦略である以上、ショートポジションも使っているため市場平均負けすることがある点です。コロナショック後にナスダックが大幅に上昇しましたが、一本調子に相場が浮上するような場合は、この戦略ではたいして利益が出ないこともあります。

グローバルマクロ戦略

グローバル(世界)マクロ(大局)という意味ですが、世界情勢、グローバル経済状況、政治情勢などをマクロ目線で分析し、株式、債券にとどまらず通貨、コモディティなどの世界のあらゆる市場・商品を対象に、ロングショートを駆使して収益を上げることを目指す戦略です。アナリストなどを総動員して経済指標の結果や今後の世界情勢を予測して、対象取引商品まで落とし込んでいく「トップダウン型」アプローチが通常採用されます。「イングランド銀行を負かした男」として有名なジョージソロスのクォンタムファンドなどの有名ファンドがグローバルマクロ戦略をとっています。

メリットとしては、先物や通貨オプション、株式など流動性の高い商品を通常利用するため機動性高く、かつどんな局面でも収益機会を狙うことが可能です。デメリットとしては、レバレッジを高く利かせるため、読み通りに相場が動かなかった場合など大きな損失を出す可能性があります。

イベントドリブン戦略

企業の経営に重大な影響を与えるM&Aや業務提携、リストラなどのインパクトの大きな経営イベントが発生した際に起きる株価の変動から収益を上げる投資手法のことです。また「物言う株主」として経営陣に経営改革を要求するなど、自らがこうしたイベントを発生させ会社価値の上昇を狙い、株価を高めてその後売却し利益を上げることなどもこの戦略に含まれます。

メリットとしては、市場の値動きとの相関性が低い取引が可能でどういった状況でも収益を狙うことができるというポイントがあります。デメリットとしては、イベントに起因する値動きをとらえる必要があるため、そこまで多くの収益機会があるわけではないところと、株価がイベントによりすぐに反応するとは限らず収益化に時間がかかることが挙げられます。

レラティブバリュー戦略

レラティブ(比較的、相対的)バリュー(価値)という意味で、複数の資産を比較したときに割高と判断されるものをショートし、割安と判断されるものをロングし、その後本来の価値に応じて価格が是正されたタイミングでポジションを清算し利益確定する戦略となります。相関性の高い資産同士においてロングとショートを両方建てる所謂「両建て」を使って収益を狙っていく戦略になります。例えば原油価格と商社株の値動きに相関性があった場合に、原油価格が割高であり、商社株が割安であれば、原油をショートし商社株をロングするというポジションが考えられます。

メリットとしては、相関性の高い資産ペアを利用してロングとショートの両方を建てて市場の歪みから収益を狙うため上げ相場下げ相場に関係なく収益を狙うことが可能です。またロングとショートを両方建てているため大きく損失を出さないようなポジションで運用することも可能です。デメリットとしては、目論見が外れて歪みが拡大してしまうと大きな損失が出てしまうところです。

まとめ

ヘッジファンドの運用戦略のうち、いくつか代表的な戦略をみてきました。これらに限らずまだまだ多種多様な運用戦略が存在しますし、ビッグデータの活用やAI技術の発展も著しい昨今ですので、今後も新しい運用手法がきっと登場するでしょう。スーパーコンピューターに運用を任せて、マーケット追従型で上昇局面ではロング、下落局面ではショートを使っていくような戦略もありますし、コンピューターやAIなどは既に活用されています。

どのファンドにも共通のリスクとしては、投資家から解約が出ると運用可能な資金額が減るため、あまりに解約が多いとロングやショートポジションの維持が不可能になり運用パフォーマンスに悪影響がでることがあります。またこうした事態を避けるために投資信託ほど流動性は高くなく、解約できるタイミングが限られるケースが多いです。その点も投資家の皆様は注意しておいたほうがよいです。また運用資産があまりにも多くなりすぎると運用しづらくなり、パフォーマンスが出せなくなるという意見もあります。

なおフィデリティインベストメンツでマゼランファンドを運用したピーターリンチという有名なファンドマネージャーがいますが、彼は自著で運用規模はパフォーマンスに影響を与えないと言っていましたので、結局のところ、すべてはファンドマネージャーの腕次第ということでしょう。

ヘッジファンドへの投資は、以前は1億円や100万ドル以上からの投資からしかできませんでしたが、最近は1千万円や10万ドルから投資可能という条件も出てきており、手を出しやすい資産クラスとなってきています。ヘッジファンドの取り扱いは日本ではまだまだ少ないのが現状です。もし興味がある場合は一度IFAに相談してみるのも手ですよ!

それでは皆さん、アリーヴェデルチ!またね!

IFAへの資産運用のご相談は、IS.PROJECTSへお任せください。
黒田太郎
執筆者
黒田太郎
ファイナンシャルプランナー
オーストラリアのLaTrobe大学でコンピューターサイエンスを専攻。卒業後日系メーカーに就職しタイ、シンガポール、台湾に駐在し通算13年の海外生活を経験後、退職しFP(ファイナンシャルプランナー)として活躍中。 一人でも多くの人の役に立つような情報、たまにちょっとニッチな情報と幅広く発信させて頂きます! 保有資格 AFP認定者、ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員一種、応用情報技術者
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