債券に関する記事一覧
2023.5.2

債券の種類とリスク。AT1債と劣後債の違いってなに?

債券の種類とリスク。AT1債と劣後債の違いってなに?
目次
01. 
債券の種類
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02. 
CoCo債とAT1債の違い
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03. 
AT1債と劣後債の違い
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04. 
銀行が発行する債券はどうしてそんなに種類があるのか?
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05. 
まとめ
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ボンジョルノ!皆さんこんにちは!

これまでも何度か取り上げてきた債券投資について今回は掘り下げていきたいと思います。債券投資は株式投資と比較してローリスクローリターンと申し上げましたが、債券投資全体がローリスクローリターンかというと一概にはそう言えません。債券の中でも色々な種類がありますので、今回は債券種類を細かく見ていきましょう。なお、本記事では仕組債は除外しています。仕組債については別の記事に記載していますのでそちらを参考にしてください!

債券の種類

債券の種類をリスク順・法的弁済順位順に並べた図(TLAC債、BⅢT2債を含む)

※あくまでイメージです。発行体によって発行している債券種類も変わります。

債券の中でもリスクによってシニア債やジュニア債などと呼びます。最もリスクの低い債券を「シニア債(優先債)」、最もリスクの高い債券を「ジュニア債(劣後債)」、中間にあるものを「メザニン債」と呼びますが、あまり聞いたことはありません。シニア債とジュニア債は抑えておきましょう。とはいえその分類の中でもいくつか種類がありますので、代表的なものを見ていきたいと思います。

そもそも同じ「債券」というのにリスクが違うというのはどういうことなのか?これは弁済順位の違いとなります。弁済順位とは、債券の発行体(国や企業)が債務不履行(デフォルト)となった場合に、その発行体が保有する資産を現金化して債務者に返済していくのですが、その受け取る優先順位をいいます。債務不履行となった場合でも完全に資産ゼロということは通常なく、自社ビルといった不動産など何かしらの資産を保有していることがほとんどです。これらを現金化して優先順位に従って債務者へ一部返還していくことになりますが、この順位が弁済順位と呼ばれます。

弁済順位が高いほうがローリスクローリターンとなり、リスクが低い分利回りも低くなります。そして弁済順位が低いほうがハイリスクハイリターンとなり利回りも高くなります。なお株式はもっとも弁済順位が低いので、そういった点でも債券投資は株式投資よりローリスクローリターンと言われています。

1. 普通社債

ストレート債やシニア債とも呼ばれますが、普通社債というと民間企業が発行体となる債券のうち、満期に額面で償還され、満期までの間に定期的に利金(利息)が支払われます。通常投資家が購入する債券でもっともローリスクな債券種類となります。

2. 劣後債

ジュニア債と呼ばれることもあります。前述の普通社債に比べると弁済順位は下になりますので、デフォルトなどの劣後事由発生時は、普通社債保有者の債務弁済が完了した後に劣後債保有者へと弁済されるため、ほとんど資産が残っていなかった場合などは大きく元本毀損する可能性があります。発行体側のメリットとしては、普通社債の発行で資金調達した場合はバランスシート上では負債として計上しなければなりませんが、劣後債の場合は一定の条件においては自己資本への算入が認められるため、負債を増やさずに自己資本として資金調達することが可能です。そのため利回りを多く払ってでも、普通社債ではなく劣後債を発行する企業が存在します。

3. 永久劣後債

前述の劣後債のうち、満期が定められていない種類の劣後債となります。とはいえ期限前償還条項が通常付帯しており、発行体の判断で償還を迎えることが可能です。一番最初の期限前償還のタイミングを初回コールやファーストコールと呼びます。このタイミングで発行体判断によりコールといって繰上償還されることがほとんどですが、発行体判断によっては見送ることも可能です。これをスキップやコールスキップと呼びます。コールされれば額面で債券保有者には償還されることになります。

債券投資家は初回コールでの償還実施を目論んで投資していますので、発行体がコールスキップをした場合は嫌気され債券価格も下落しますし、発行体に何か問題があると見なされるため株価などにも当然影響がでます。発行体としてもコールスキップをしてしまうと、投資家の信用を失い次回の債券新規発行時により多くの利回りを提示しないといけないなど資金調達が難しくなるリスクを負うことになります。またコールスキップにより、資本として認められる金額が減少したり、初回コール以降はより多くの利金を支払うなどの条件がつくことが多いので資金繰りも厳しくなってしまいます。そのため発行体としても初回コールのタイミングで償還してしまって、新規に劣後債を発行したほうがメリットがある場合が多いです。

4. CoCo債(偶発転換社債)

ココ債というなんともかわいらしい響きの債券ですが、Contingent Convertible Bondと呼ばれ日本語では偶発転換社債と呼ばれます。Contingentの意味は偶発的な、偶然の、不慮の、不測のといった意味となります。日本語の意味合いとしては「不測の事態の場合に別のものに転換される債券」といったところでしょうか。CoCo債は銀行などの金融機関が発行しますが、その発行体の自己資本比率があらかじめ定められた水準を下回った場合に元本毀損が発生したり、強制的に株式に転換されたりします。

5. AT1債(Additional Tier-1)

Additional(その他)Tier1債の略からきています。背景としてはリーマンショックをきっかけに銀行に対する自己資本規制が強化され自己資本比率規制(バーゼル規制)が国際的に決められました。バーゼル規制に従い銀行は自己資本比率を一定以上確保する必要があり、自己資本内訳のうちバーゼル規制の「その他Tier1資本」として自己資本算入できる条件を満たす債券としてAT1債を発行するようになりました。そのためAT1債は銀行が発行する債券となります。AT1という言葉自体がバーゼル規制からきている言葉なので、金融機関以外が発行するAT1債はありません。AT1債もCoCo債と同様に自己資本比率が一定以下となった場合に元本削減が行われたり、株式に転換されたりします。また満期がない永久債という特徴があります。

6. BⅢT2債(バーゼルⅢ適格Tier2債)

AT1債に似た債券種類となります。こちらはバーゼル規制の「Tier2」に自己資本算入できる条件を満たす債券として銀行が発行するものとなります。AT1債と違って永久債ではなく、5年債以上の長期満期設定が条件となります。AT1債同様に金融機関が発行するもので、破綻が認定されたタイミングで元本削減等が行われます。発行体が破綻となった場合は基本的に全額元本削減となります。AT1債よりは弁済順位的には上位になります。

7. TLAC債

こちらもリーマンショックの影響から生まれた債券です。 G-SIBs*に指定された銀行が発行する債券となりますがシニア債(普通社債)よりは弁済順位が低いです。世界的にシステム上重要な銀行は金融安定理事会(FSB)よりG-SIBsとして指定されており、日本の銀行では三菱UFJやみずほ銀行などが指定されています。日本ですと銀行の持ち株会社(例、三菱UFJファイナンシャル・グループ)がTLAC債を発行しています。TLACは”Total Loss Absorbing Capacity”からきており、銀行が破綻した場合でも投資家に損失を転嫁し、公的資金を注入せず預金者を保護するためのスキームとなります。

G-SIBs*: Global Systemically Important Banksの略で、グローバルなシステム上重要な銀行で訳されます。金融安定理事会(FSB)が世界的に重要な銀行として定期的に指定する銀行です。リーマンショックで露呈された銀行破綻リスクを教訓に設定された歴史をもちます。

ポンデアのマスコットキャラクター

一言で債券といっても様々な種類があります。高利回りの債券の場合は債券種類を確認することが大事です!

CoCo債とAT1債の違い

CoCo債は偶発転換社債ですので、不測の事態になった場合に株式に転換される条件がついた債券となります。一方でAT1債は発行体となる銀行がバーゼル規制に従い「その他Tier1」として自己資本算入できる条件を満たす債券となります。AT投資家目線でいえばどちらも自己資本比率が一定を下回ったりすると株式へ転換されたり、元本削減される債券なので同じようにとらえることも可能ですが、CoCo債は「不測の事態の際に転換される債券」という意味であるのに対し、AT1債は「バーゼル規制上、その他Tier1資本として算入可能な条件を満たす債券」という意味合いがあります。金融商品としての位置づけは違えどどちらも株式に転換される可能性があります。とはいえどういうリスクがあるのかは発行の差異の条件によっち違いますので投資家の皆さんは、AT1債やCoCo債という言葉だけで判断せず、是非募集要項などで条件をしっかり確認して理解するように注意してください。またこれらの金融商品に投資する際は外務員から対面で話すケースが多いと思いますので担当の外務員がしっかり商品性を理解しているかも合わせて確認すると良いでしょう。

AT1債と劣後債の違い

AT1債は発行体となる銀行がバーゼル規制に従い「その他Tier1」として自己資本算入できる条件を満たす債券です。一方で劣後債は、ストリート債やシニア債と呼ばれる普通社債より弁済順位の低い債券のことを指します。劣後債は銀行などの金融機関以外でも多く発行していますが、AT1債は銀行のみが発行するものですので、この点が大きく違います。同一の発行体が劣後債とAT1債の両方を発行している場合は、通常は弁済順位としては劣後債のほうがAT1債より上になりますので、利回りも劣後債のほうが低く、AT1債のほうが高いはずです。とはいえケースバイケースとなりえる様々な条件が付いている可能性がありますので、利回りや条件の確認は怠らないようにしましょう。利回りが高いということはよりリスクのある商品ということになる点も意識しておきましょう。

銀行が発行する債券はどうしてそんなに種類があるのか?

TLAC債、BⅢ Tier2債、AT1債は金融機関により発行されます。何故銀行はこうも様々な債券を発行するのかというと、その背景には前述のとおりリーマンショックがあります。当時は米国政府によってシティバンクに公的資金が注入され、銀行の連鎖破産は防衛されました。こうした教訓から銀行の自己資本比率に対する規制が強化され、銀行破綻時にも公的資金を注入せずに済むように改善措置が取られました。そして万が一の場合は投資家に損失を転嫁する形となりました。AT1債は自己資本でいうその他Tier1債に位置し、自己資本比率が一定以下になった場合は元本削減もしくは株式転換となり、投資家が元本削減という損失を受け入れるかわりに、銀行が経営を存続可能にするものです。BⅢ Tier2債やTLAC債の場合は、破綻時に元本削減となりますので、投資家が元本削減という損失を受け入れる代わりに、銀行は破綻となるが預金者の預金が極力保全されることになります。発行体からみると資本比率規制に合致するために、こうした複数種類の債券を発行することになるのです。投資家としては同じ発行体が発行する債券であっても、このように大きく弁済順位が違うということを理解しておくことが必要です。

弁済順位は絶対なの?

基本的に弁済順位は守られるのですが2023年の3月に話題となったUBSによるクレディスイス救済の過程によるクレディスイス発行のAT1債の無価値化は例外として業界に衝撃を与えました。というのも本来弁済順位ではAT1債は株式より上となるのですが、本過程で株式保有者はクレディスイスの株式22.48株につきUBS株式1株が与えらえることとなり無価値は免れた一方で、AT1債は無価値となったからです。弁済順位という掟が破られたことにより市場に大きな影響を今後も与えることになるでしょう。

まとめ

今回は債券種類について取り上げてみました。金融機関が発行する債券は特に種類が多くわかりづらいものもあるかと思いますが、投資を検討する際は是非IFAなどに相談して、きちんと金融知識を持つ担当者から購入するように心掛けてください。特に証券外務員でも銀行が発行する債券種類やリスクリターンについて正しく理解していない可能性も十分ありますので、大きな資金でストレート債や普通社債以外に投資する場合は、きちんと理解のある担当者を介して投資するように注意しましょう。

それでは皆さん、アリーヴェデルチ!またね!

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黒田太郎
執筆者
黒田太郎
ファイナンシャルプランナー
オーストラリアのLaTrobe大学でコンピューターサイエンスを専攻。卒業後日系メーカーに就職しタイ、シンガポール、台湾に駐在し通算13年の海外生活を経験後、退職しFP(ファイナンシャルプランナー)として活躍中。 一人でも多くの人の役に立つような情報、たまにちょっとニッチな情報と幅広く発信させて頂きます! 保有資格 AFP認定者、ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員一種、応用情報技術者
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