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2023.11.15

はじめてでもわかる既発債投資!既発債の利回り計算と経過利息や新発債との違いについて

はじめてでもわかる既発債投資!既発債の利回り計算と経過利息や新発債との違いについて
目次
01. 
既発債とは?新発債と既発債の違い
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02. 
既発債 vs 新発債!既発債の特徴。投資するならどちらがいいの?
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03. 
既発債の利回り計算。複利利回りってなに?
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04. 
既発債の購入方法
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05. 
まとめ
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ボンジョルノ!皆さん、こんにちは!

今回は債券投資の基本となる既発債と新発債の違いについて取り上げてみたいと思います。また既発債のメリット・デメリットや利回り計算や経過利息の考え方も解説していきたいと思います。

既発債とは?新発債と既発債の違い

新発債と既発債の違い

新規に発行される債券を新発債(しんぱつさい)や新発債券と呼びます。一方で既に新発債として発行された後に市場に出回る債券は「既に発行された債券」という意味で既発債(きはつさい)もしくは既発債券と呼ばれます。

新発債は募集の段階で満期償還日や利率(クーポン)そして売出価格が固定されます。数週間の募集期間がありその間に投資家の方は申し込むことができ、その間基本的には条件が変わらないのが特徴です。また応募状況により最終的な利率が確定するパターンの募集方法もあります。その場合は想定利率がある程度の幅で最初から提示されます。

一方で既発債ですが、こちらは既に発行された債券が二次流通しているようなものとイメージしてください。自動車や不動産と違って債券は新品や中古という概念はありませんが、新発債が新品の自動車、既発債が中古車とイメージするとわかりやすいかもしれません。中古車が毎日需給関係の関係で値段が変動するように、既発債は金利動向によって日々取引価格が変動します

既発債 vs 新発債!既発債の特徴。投資するならどちらがいいの?

既発債の特徴

それでは債券投資家としては既発債と新発債のどちらに投資したほうが、旨みがあるのでしょうか?まずは既発債の特徴をみていきましょう。

既に市場に流通しているためいつでも購入可能

新発債のみに投資対象を絞った場合は募集時点でしか投資ができないことになってしまいます。一方で既発債は既に市場に出回っていて基本的にいつでも購入可能なので、投資家が投資したいタイミングで購入が可能というのが最大のメリットとなります。

一方で非常に条件がよい新発債の場合は投資家が手放さない場合もあるので、そういった債券は新発債で購入するしかないケースもあります。また円建て債券の場合ですと個人投資家向けに既発債としてあまり出回らないパターンもありますので、投資したい銘柄が既に決まっている場合は要注意です。

利回り・満期・通貨など様々な条件の債券を購入可能

既発債の場合は車でいう中古車のように発行のタイミングが違う債券がたくさん存在します。

例えば70年代のフォルクスワーゲンを購入したい場合は中古車という選択肢かないのと同様に、債券も過去に発行されたものを購入したいとなれば当然既発債しか選択肢はありません。最終利回りは債券市場の動向によりどの債券も同じような傾向になりますが、表面利回りが高い債券であればその分取引価格は高いですし、表面利回りが低い債券は取引価格が低くなります。豊富なラインナップから選択できるという点では既発債のほうがメリットありといえるでしょう。

キャピタルゲイン(売却益)を狙える可能性もある。

債券投資におけるキャピタルゲインのイメージ

既発債は、そもそも既発債として出回っているため、自身が保有後に売却したくなった場合でも容易に売却することができます。

例えば現在のように市場金利が高いタイミングで価格の落ちた既発債を購入しておけば、将来市場金利が低下して債券価格が上昇した場合に、満期前に途中売却してキャピタルゲイン(売却益)を狙うことも可能です。

また満期まで保有すれば、額面価格と購入価格の差額でキャピタルゲインを獲得することもできます。現在は市場金利が高くなっており、多くの既発債がアンダーパーで取引されている状況なのでキャピタルゲインは狙いやすくなっています。

購入時に経過利息を払う必要がある。(売却時は貰える)

経過利息のイメージ

既発債購入時の注意点は、既発債には経過利息というものが存在するという点です。

債券は通常年2回などの利払い日が設定されています。債券投資家はこの利払い日に債券を保有していないと利金を受け取ることができません。そうなると利払い日の直前に債券を購入して利金を購入後受け取った方がお得なため人気になりますし、逆に利払い日直後の債券は人気がなくなってしまい、結果的に利払い日前後で債券価格が動くことになってしまいます。

そのため債券取引には経過利息という概念があり、既発債の買い手は、売り手に対して前回利払い日から受渡日までの間分の利金を、経過利息という形で支払うことになります。この仕組みのお陰で利払い日前後での債券価格の変動が発生しないようになっています。なお株式ですと配当日前後で配当金が考慮され株価が動きます。債券の場合はこの仕組みがあるので、債券投資家は利払い日を意識して取引する必要がないというのは押さえておくべきポイントでしょう。

表面利回りと最終利回りが違う点に注意

SBI証券より販売されている円貨建債券(既発債)の一部
SBI証券より販売されている円貨建債券(既発債)の一部

既発債は基本的に額面通りで取引されることはなく債券市場の動向に連動して、アンダーパーやオーバーパーで取引されることがほとんどです。

例えば上記の実際に取引されている既発債でみてみましょう。利率は表面利回りを意味し保有期間に支払われるクーポン(利金)のことを指します。一方で右側の利回りとは最終利回りのことを意味し、満期まで保有した場合のキャピタルゲインならびにキャピタルロスが加味された利回りとなります。

参考単価が100を超える銘柄はオーバーパーであり額面以上の価格で購入する必要があり、満期償還時にキャピタルロスが発生するため最終利回りは表面利回りを下回ります。一方で参考単価が100を下回るアンダーパーの銘柄はキャピタルゲインが発生するため最終利回りは表面利回りを上回ります。

投資家の方は利金発生時、満期償還時に課税される点も気をつけておきましょう。満期償還時にキャピタルロスが発生する場合は、その年の取引で損失が必ず発生するためその点を考慮にいれた取引が必要です。

既発債の利回り計算。複利利回りってなに?

既発債の利回り計算方法

既発債の利回り計算ですが、上記式で計算することが可能です。FP(ファイナンシャルプランナー)の資格試験でもでてくる式ですので目にした方も多いかもしれません。また計算方法としては上記の式を活用することで計算できますが、証券会社側で最終利回りは計算されたものを提示してくれるので、一般投資家の方はそれほど計算式を気にしなくてもいいかもしれません。

なお、この式を使って利回りを計算しても恐らく証券会社が提示している利回りと乖離すると思います。というのも既発債には前述の経過利息という概念もありますし、また通常証券会社が提示する利回りは複利利回りといって、利金を全て再投資した場合の利回りとなっています。通常利金発生時には税金が源泉徴収されますので、仮に再投資した場合でも税金分原資が減るため利回りは下がります。また利金発生時に同じ債券に同じ条件で投資することは基本的に不可能なので注意です。

この差異は表面利回りが大きいほど顕著になります。一方でゼロクーポン債(割引債)や表面利回りがゼロに近い債券であれば、利金に課せられる税金がない、もしくはあっても影響が小さいので証券会社が提示する複利利回りに実際の利回りも近いものとなります。

既発債の購入方法

既発債であれ新発債であれ、証券会社でどちらも購入可能です。ただし新発債の場合は募集時にしか購入することができませんので、タイミングによっては取り扱いがない可能性も十分あります。また個人投資家向けには出回っていないような債券もたくさんありますので、株式と違い特定銘柄の債券に投資したいという希望が叶うケースはそれほど多くないかもしれません。

新発債であれ既発債であれ、証券会社ごとに取り扱いラインナップが違うケースがほとんどですので、面倒な方はIFAに相談してみるといいと思います。複数の証券会社に所属しているIFAであれば、投資家の意向に沿った債券を提案してくれるでしょう。

IFAとは? IFAを利用するメリットを解説の記事へのリンク

まとめ

今回は債券のうち既発債について取り上げてきました。新発債と違い、経過利息という仕組みがある点や売買価格は額面通りではなく、債券市場や金利動向により日々変動する点など新発債との違いは理解しておいたほうがよいでしょう。

昨今米ドル建てなど債券利回りが5%を超えるような状態になっており、これまで以上に債券投資に興味がある方が増えているかと思います。株式投資だけでなく是非債券投資もご自身のポートフォリオに加えてみてください!

それでは皆さん、アリーヴェデルチ!またね!

黒田太郎
執筆者
黒田太郎
ファイナンシャルプランナー
オーストラリアのLaTrobe大学でコンピューターサイエンスを専攻。卒業後日系メーカーに就職しタイ、シンガポール、台湾に駐在し通算13年の海外生活を経験後、退職しFP(ファイナンシャルプランナー)として活躍中。 一人でも多くの人の役に立つような情報、たまにちょっとニッチな情報と幅広く発信させて頂きます! 保有資格 AFP認定者、ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員一種、応用情報技術者
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